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本業は編集者、ディレクター。でも、実はシブヤ大学恵比寿キャンパス校長や、恵比寿のアートイベント発起人など、いろいろしてます。そんな小倉若葉(おぐらなおよ)の日常を綴っています。子育ても満喫中。
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遠吠え大作戦_その2

さて、昨日のつづきです。


10日の朝、ドクターの診察を受け、
もう一度陣痛促進剤を点滴することになりました。

診察の間も陣痛に襲われ、思考力も低下。

正直、このときの私には、自分で出産するんだという前向きな気持ちは
ほとんど残っていませんでした。

もうどうにでもなれ、という状態だったのです。


そんな様子を見てか、予備室で点滴の準備をしている間、
ある若い助産師さんが私の手をとって、明るい声できっぱりと言いました。

「今日中に、絶対に産みましょう!」

「……(今日中に産めなかったら、もう体がもたないよ……)」


返事をするのも億劫になっている私に、彼女はつづけて言いました。

「妊娠する力のある女性は、自分で産む力も必ずもっているんです。
だから、絶対に産めます。弱音はいくら吐いてもいいです。
そのたびにそばにいて励ましますから!」

その言葉のあまりの力強さに思わず彼女の顔を見ると、
私より年下のはずなのに、お母さんみたいな強くてやさしい顔をしていました。


私にあとどれくらいの力が残っているのか?

徹夜もいとわず仕事をしてきたおかげで
自分の限界ラインがどこにあるか、
自分でいちばんよくわかっているつもりです。


あと12時間ならがんばれそうだ。

今日中になんとかしよう。

再び前向きな気持ちになれたのでした。


9:20 陣痛促進剤点滴開始。陣痛がすぐに2〜3分間隔に。

11:20 (ようやく、やっと)分娩室へ移動。


……ところで、陣痛が来たとき、乗り切るポイントは2つあります。

1つめは、目をつぶらないこと。

2つめは、なるべく息を長く吐いて、力を抜くこと。


これって、よく考えてみてください。

矛盾してると思いませんか?


痛みって、普通は目をつぶって息を止めてやりすごすものでは?

陣痛は、それと正反対のことをしなくちゃいけません。

しかも、痛みはかつて経験したことのない強いものときています。


助産師さんには「ろうそくを吹き消すように、長い息を吐いて。
声はいくらでも出していいから」とアドバイスを受けました。

目をつぶると、吐く息がどうしても短くなってしまうそうなのです。

痛くて目はつぶらずにはいられないし、息だって長くなんか吐けないけど、
とにかくがんばれる時間は限られている、
ここは素直にアドバイスに従うことに集中しました。

が、現実にはインターバルで何度も気を失いそうになるし、
陣痛が来れば骨盤がくだけそうに痛いし……
そのたびに母と夫がそばにいて励まし、腰をさすってくれました。


唯一の救いは、声はいくら出してもOK、ということ。

陣痛のたびに「ふーーーーー」と息だけ吐くよりは、
「あーーーーー」とか「うーーーーー」とか声を出したほうが、
100倍ラクに息を吐けるからです。

ヨーガの先生が「出産は動物になった人の方が進むわよ」と
言っていたのを思い出しました。

実際に我慢せずに声を出してみると、
そのうち、思ったより力が抜けることがわかってきました。


あ……なんかコツがわかってきたかも……
そう思うのと同時に、家にいるチビ犬のことが頭をよぎりました。

(これって……ペコが救急車のサイレンが鳴るたび、遠吠えしちゃうのに似てる!?
そうだ、ペコちゃんの遠吠えのイメージでいいんだ。)


それに気づいてからは、思い切り吠えましたとも。

火事場の馬鹿力とヤケクソは、たぶんセットです。

ええ、恥ずかしいなんて言ってられません。

こっちは自力で産めるか、産めないかの瀬戸際だったんですから!


遠吠えしだしたら、チビすけがどんどん下がってくるのがわかりました。

いざ分娩台に上がったら、助産師さんたちが急にバタバタとしだして、
ドクターを呼ぶのも、手術着に着替えるのも、間に合わないくらいのスピードでした。


14:51 チビすけ誕生。

その瞬間、35時間近く続いた陣痛がウソのようにピタリと止んだのです。

同時に、今まで経験したことのない歓びと幸せな気持ちに包まれました。

産んだあとは失神するかもなんて思ったけど、そんなのは杞憂で、
痛みと一緒に眠気も疲労もどこかへ吹き飛んでしまいました。


終わってみれば、分娩時間5時間24分。

初産婦の平均が12時間、経産婦で8時間といわれてますから、
かなりのスピード安産でした(笑)。

ただ、陣痛が弱かっただけだったんですね……(苦笑)。

翌日からは、同じ日に産んだどの産婦さんより元気でしたし。


遠吠え作戦が功を奏したのは、言うまでもありません。

これから出産予定の方、犬のキモチになっての遠吠え、ぜひお試しを!




ちなみに……お産の痛みは忘れるって本当です。

私、あと10歳若かったら、子だくさん母ちゃんになってたかもしれません。


それくらい、お産てすばらしくて、赤ちゃんって愛しくて。

赤ちゃん期間がすぐに終わってしまうことがわかってるからこそ、
何度でも体験したいなあ……と思ってしまう自分がコワイです。


最後に、こんなすばらしい体験ができたのは、
夫や母の献身的な支えと励まし(ふたりとも最後まで立ち会ってくれました)と、
そして、私の中の産む力を呼び覚ましてくれた若い助産師さんの言葉が
あったからこそでした。

そして、先輩助産師さんにゲキを飛ばされながらも、私から片時も離れず、
力になってくれた新米助産師さんにも心からお礼を言いたいです。

彼女は出産が終わったあと、
「誕生日って、改めてお母さんに感謝する日なんだって思いました。
ナオヨさんのお産に立ち会うことができて、本当によかったです」
と言ってくれました。


新しい生命の誕生を見守ってくれて、本当にありがとう。

そして、何度もブログにアクセスして、チビすけの誕生を
今か今かと首を長くして待っていてくれた人たちにも、ありがとうを伝えたいです。


いつかこの日のことを、チビすけに話すときが来るでしょう。

たくさんの人に支えられ、祝福されて生まれてきたことを、
どうか忘れずに成長していってね。
by hanaoui | 2008-10-18 18:22 | diary
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